鍛造金型の交換手順

鍛造における金型(ダイス)交換とは

鍛造の現場では、生産する部品の切り替えに合わせて金型(ダイス)交換の作業が発生します。大型設備で使用される鍛造用金型は、数百kgから数トンに及ぶものもあり、重量物の搬送や位置決めが必要となります。

金型交換の作業は大きく分けて、設備を停止した状態で行う「内段取り」と、設備の稼働中に事前準備を進める「外段取り」の2種類に分類されます。熱間鍛造では金型や周辺設備が高温になるため、設備停止後の温度確認や安全対策に時間を要する場合があります。一方、冷間鍛造では高温環境での作業は発生しないため、交換手順は設備や加工方法によって異なります。

鍛造金型交換の基本手順

鍛造金型の交換手順は設備や鍛造方法によって異なりますが、一般的には次の流れで行われます。

  1. 設備を停止し、ロックアウト・タグアウト(LOTO)などの安全対策を実施する
  2. 必要に応じて金型や設備の温度低下を確認し、残圧除去などの安全確認を行う
  3. 金型固定部(ダイホルダーやクランプ機構など)を解除する
  4. クレーンや金型交換装置などを使用して既存金型を搬出する
  5. 新しい金型を搬入し、位置決めを行う
  6. 金型を固定し、固定状態を確認する
  7. ノックアウト装置など必要な機構を調整する
  8. 試し打ちを行い、製品寸法や品質を確認する
  9. 安全確認後、生産を再開する

実際の交換時間は、設備の自動化レベルや金型重量、作業体制などによって大きく異なります。

鍛造金型交換で起こりやすい課題・リスク

鍛造金型の交換では、安全性や生産性の面でさまざまな課題があります。代表的な課題は次のとおりです。

重量物の取り扱いによる安全リスク

鍛造用金型は重量物であるため、搬送時には十分な安全管理が必要です。大型の金型では、吊り上げ作業中の落下や挟まれなどの労働災害を防ぐため、適切な搬送方法や作業手順を遵守することが重要になります。

資格保有者への依存と作業負担

クレーンや玉掛けを使用する作業では、設備や作業内容に応じて法令に基づく資格や特別教育を受けた作業者が必要となる場合があります。重量物を扱うため、作業者の経験や技能が安全性や交換時間に影響することがあります。

熱間鍛造特有の高温環境への対応

熱間鍛造では、高温環境下で金型交換を行う場合があり、防熱具の着用や十分な安全確認が欠かせません。また、交換後の立ち上げ時間の短縮や金型への熱衝撃を抑えるため、あらかじめ金型を予熱しておく運用が採用されることもあります。

交換時間の長期化による生産性への影響

重量物の搬送や安全確認、試し打ちなどの工程があるため、設備や生産条件によっては金型交換に時間がかかる場合があります。特に多品種少量生産では設備停止時間が増えやすく、生産性向上のためには交換作業の効率化が重要になります。

金型交換の時間を短縮する方法

金型交換時間を短縮する代表的な改善手法として、SMED(Single Minute Exchange of Die:シングル段取り)が広く知られています。SMEDは、段取り時間を10分未満に短縮することを目標とした改善手法であり、その中心となる考え方が、内段取りと外段取りを分離し、可能な限り外段取りへ移行することです。

鍛造では、次工程で使用する金型の予熱や工具・部材の事前準備などを外段取りとして進めることで、設備停止時間の短縮につながる場合があります。

また、金型交換装置を導入することで、金型搬送や位置決めなどの作業を効率化できる場合があります。設備によってはクレーン作業の一部を金型交換装置へ置き換えられる構成もあり、交換時間の短縮や作業の標準化、安全性の向上が期待できます。

金型交換装置を導入するメリット

金型交換装置を導入することで、安全性の向上や作業効率の改善など、さまざまなメリットが期待できます。

吊り上げ作業を減らし、安全性の向上が期待できる

横段取り方式を採用した装置では、設備への着脱時に天井クレーンによる吊り上げ作業を削減できる構成もあります。これにより、吊り荷の落下や挟まれなどのリスクを低減でき、安全性の向上が期待できます。

重量物の搬送を効率化し、作業負担を軽減できる

金型交換装置を活用することで、重量物の搬送や位置決めを効率化できる場合があります。特に熱間鍛造では、高温環境下での作業時間を短縮できる可能性があり、作業者の負担軽減にもつながります。

作業を標準化し、技能継承につながる

金型交換装置を導入すると、交換作業の標準化が進みやすくなり、作業者の熟練度による作業時間のばらつきを抑えられる場合があります。また、教育や技能継承の負担軽減にも役立ちます。ただし、設備によっては有資格者による作業や安全教育が引き続き必要です。

鍛造向け金型交換装置の選び方のポイント

鍛造向け金型交換装置を選定する際は、次の4点を確認しましょう。

① 耐荷重性能
使用する金型の重量に対応できる能力を備えているか確認します。

② 設置スペースへの適合
工場レイアウトや搬送経路に適したサイズ・構造であるかを確認します。

③ カスタマイズ性・導入までの期間
金型形状や既存設備に合わせた仕様変更が可能か、納期も含めて確認します。

④ 保守・サポート体制
故障時の部品供給やメンテナンス体制、アフターサポートの充実度も重要な比較ポイントです。

まとめ

鍛造金型の交換は、重量物の搬送や安全確認が必要となる重要な工程です。熱間鍛造では高温環境への配慮も必要となるため、安全性と作業効率の両立が求められます。

交換時間を短縮するには、SMEDの考え方を取り入れて内段取りを外段取りへ移行するとともに、金型交換装置を活用して搬送や位置決めを効率化することが有効です。

装置を比較検討する際は、耐荷重性能、設置スペース、カスタマイズ性、保守体制などを総合的に確認し、自社の設備や生産環境に適した装置を選定することが重要です。

現場の課題別で選ぶ
おすすめの金型交換装置・システム3選

ここでは、課題になりやすい「設置スペース・運用・設計」において、解決に導く3つの製品を紹介します。

通路が狭く
レイアウト変更できない
ニチエツ
無軌道タイプ
(MMCシリーズ)
ニチエツ 無軌道タイプ(MMCシリーズ)
引用元:ニチエツ公式HP(https://jpvn.co.jp/non-track/)
対応荷重量 0.4 ~ 2.5t
必要型締力 ~4,500kNクラス
こんな現場におすすめ
  • 通路幅が狭く、成形機の横に設置スペースがない
  • 大掛かりな床工事やレイアウト変更をせず、手軽に導入したい
おすすめの理由
  • W570×D780×H1,435mmのコンパクト設計と従来の装置の1/3の旋回面積によって、狭い通路でも切り返しなしでスムーズに走行。レイアウトを変えずに段取りを自動化できる。
  • 独立走行と高さ調整ができるため、クレーン不要で一人で即座に交換が可能。クレーン待ちの時間を削減し、稼働率の向上を図れる
配管が複雑
接続ミスを防げない
ストーブリ
金型交換装置と
自動配管接続/自動クランプ
ストーブリ
引用元:ストーブリ公式HP
(https://www.staubli.com/jp/ja/robotics/industries/plastics.html)
対応荷重量 要お問い合わせ
必要型締力 要お問い合わせ
こんな現場におすすめ
  • 配管の接続やクランプの固定ミスを物理的にゼロにしたい
  • カプラやクランプの制御、故障時の対応まで一括で委託したい
おすすめの理由
  • マルチカプラによる一括接続で、高度な知識がなくても正確な配管作業が完了。作業者の習熟度に依存せずに、接続不良による水・油漏れや設備故障を防ぐ。
  • 海外拠点でのトラブル時も迅速な現地対応が可能。世界29カ国に拠点を持ち、50カ国以上の代理店を展開※1しているため、遠隔地でも長期停止リスクを解消できる。
現場が特殊で
標準機では合わない
洲崎電機製作所
金型交換装置
洲崎電機製作所
引用元:洲崎電機製作所
(https://www.susaki-e.co.jp/product/)
対応荷重量 (例)~30t
※特注対応のため
要問い合わせ
必要型締力 ※特注対応のため
要問い合わせ
こんな現場におすすめ
  • 建屋の柱や既存配管を避けた設計など特殊なオプションが必要
  • 新設・既設機・中古機に限らず、装置を合わせて設計したい
おすすめの理由
  • 標準機を持たず、全てオーダーメイドでの設計。柱や配管が干渉し、標準機では対応不可と判断された現場でも、専用設計で導入できる。
  • 創業72年※2の知見により旧型機や中古機へのレトロフィットにも対応。コストを抑えながら、条件に合わせた設備にアップデートできる。
※1 参照元:ストーブリ公式HP|2026年3月時点(https://www.staubli.com/global/en/about-us/who-we-are/our-locations.html
※2 参照元:洲崎電機製作所【PDF】|2026年3月時点(https://www.susaki-e.co.jp/susaki-2023.pdf
現場の課題に応じて選ぶ
金型交換装置3選